ジオラマの世界
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高温多湿の日本では自然状態で森林が成立するため、草地という環境は遷移の初期か人為的に維持されている場所に限られる。当然、草地に生息する昆虫というのも棲む場所が限られる。そのため、人里近くに生息していながら、希少とされるものも多い。
キバネツノトンボもそんな草地の昆虫だ。「トンボ」とついているが、どちらかと言えばアリジゴクに近い。綺麗な黄色い羽根と長い触角が特徴。広い草地を飛び回るために広い視界が必要で、眼(複眼)が大きい。アップでみると結構かわいらしい。
天竜川の堤防の上を気持ち良さそうに飛び回るキバネツノトンボ。ずっとおなじルートを飛び回るので何かを見張っているみたいだ。こののんびりした飛翔をする昆虫は天竜川の初夏の代表選手だろう。
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土手の植物の構成は管理の仕方1つでガラッと変わる。
これまでと管理方法を少し変えたら、とある場所では一面にニガナが咲いた。本当に園芸植物の花畑みたいだ。かつて、「ワイルドフラワー」として外来種を吹き付けて綺麗に飾っていた時代があった。ニガナは春先だけ一面に咲くが、後は小さなロゼットでひっそりと生きているのでシバなどに悪いことはないと思う。ニガナは日本に昔からあるものなので、本当の「ワイルドフラワー」かもしれない。
ちなみに、この写真のニガナを1本持って帰って押し葉にして、つぶさに花を数を数えて「ニガナ」とした。図鑑によってはこれくらい小花の多いものを「ハナニガナ」という別種にしているものもある。今回は少し厳密に小花の数を規定した図鑑に因った。厳密なハナニガナはもっとバーと明るく咲く。
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春から初夏にだけ大きくなって、他の季節はずっとロゼット状の葉だけですごす植物は草原に多い。それらの植物は火入れ、草刈りなどの管理が行われてきた田んぼの畦や茅場を生育地としてきたものが多い。
このハタザオはアブラナ科の植物で、他の季節は小さなロゼットで過ごしているが、春になると急激に伸びて高さ1mに達する。花を下から順番に付けて沢山の実を付ける。その名のごとく旗や鯉のぼりを掲げる「旗竿」に見える。初夏の草刈りの頃にはしっかりと実を付けているので、人間の管理によって種子をあちこちにまき散らすことになる。その後はまた、小さなロゼットの姿に戻る。ハタザオという種類の誕生は人類が誕生するはるか前のことなのだが、偶然にもその生活史が人間の里の管理のタイミングに適応している。
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アカシアの別称はミモザという。黄色い花を春に付ける。
今ニセアカシアの花が最盛期だ。ミモザには一寸似ているとは思えない。学名上の種小名は「pseudoacacia」。pseudo(偽の)acacia(アカシア)そのまんまだ。普段ミモザの植栽というのをあまり見ないため、アカシアという名前を聞いてまず連想するのはこの白い花だ。アカシアの蜜として販売されているものも実はニセアカシアの蜜。
京都清水寺の発表した昨年を表す漢字は「偽」。あまり印象の良い文字ではない。能動的な偽は悪いことばかりだが、受動的に偽という言葉を冠することになったニセアカシアは昔は砂防のために植えられ、現在では養蜂業者に重宝されており、結構人間の役に立っている部分もある。環境省の定める要注意外来生物に指定された今、良い「偽」に転ぶのか、悪い「偽」に転ぶのかは人間にかかっているのかもしれない。
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信州の山はようやくフジの花が花盛りを迎えている。
フジの花はいわゆる藤色で、花の穂がヤマフジよりも長い。温帯の落葉樹林の明るい芽だしの色にはフジの方がしっくりする。遠くからでも花が目立つため、この時期の山の風景には欠かせない色彩だ。
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いきもの観察以外に薩摩半島南部の知覧町を1時間ほど散歩した時の写真。
かつて特攻隊の飛行場があったこの場所には特攻機「隼」が再現されていた。意外に大きいものだと思った。最近上映された映画に合わせて作られたそうだ。翼の片方には燃料タンク、片方には爆弾という見ただけで片道燃料というのが分かる。
知覧町にはオオキンケイギクが沢山あり、戦前から繁茂していたという。それを特攻花として特攻隊員も大事にしていたそうだ。地域によってはオオキンケイギクの近縁のテンニンギクだったそうな。確かにこれらの植物は海辺や道ばたに沢山咲く姿は綺麗なものだ。
知覧町には江戸時代の武家屋敷が並んでいる。当時のままの石垣や屋敷が残されている。屋敷の石垣には常緑樹が植えられていて、ハランやソテツなどの植栽が南国の武家屋敷の雰囲気を醸し出している。
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鹿児島県万之瀬川は薩摩半島南部を流れている。
岩には穴が空き南西諸島のポットホールと風景は変わらない。この場所から数km下流に行くと広大な砂浜が広がる海に出る。深い常緑樹林からいきなり海に到達するあたりも南西諸島の様な感じだ。
飛んでいたチョウはヒオドシチョウかと思ったら、タテハモドキだった。大きな目玉模様が特徴の南方のチョウだ。
水のしみ出す場所にはモンキアゲハが集団で吸水していた。川沿いには本州にもあるような草が生えていたので、まだ本土なのだと思えるが、南西諸島や東南アジアと変わらない風景(勝手に想像している)だろう。
万之瀬川を歩いた日は鹿児島県は30℃に達し、岩ばかりの川辺で危うく熱中症になりそうだった。
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南に生育するヤマフジは普通のフジに比べて花が大きく青みが強い。フジ棚で作られているフジが山のものより花が大きいのは品種改良の影響もあるが、その原種がフジではなく、ヤマフジであることに因る。
本州のフジになれていると何事かと思うほど花が大きい。花の房も短く、フジというより南方系のモダマやデイゴの様な花の付き方をする。
花の色のコントラストが強く、花弁には少し光沢がある。朝日が少し当たっただけでストロボを当てたような写真になった。本州から南へ向けて移動すると道路沿いに咲いているのが、フジから近畿あたりでヤマフジが混じりはじめるようになり、四国ではヤマフジがやや多め、九州は圧倒的にヤマフジが多い状態になる。1つの分類群に着目すると気候の変化を顕著に感じることができる。これをいろいろな分類群で総合的に消化できるようになると、自然のいろいろな変化を肌で感じるようになるのだろう。いつかはそうなりたいものだ。
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南九州からの帰りは、四国にフェリーで渡り、淡路島経由で帰った。四国をただ通過するだけではもったいないので、徳島県の吉野川河口に寄った。雲1つない最高の天気で、アサリを捕っている人々が沢山いた。アサリを捕っている人の周りで渡り途中のチュウシャクシギとダイゼンがカニや貝をついばんでいた。
砂浜には帰化植物のナヨクサフジが満開だった。眼がチカチカするくらい派手な紫色だ。
ナルトサワギクも満開だった。鳴門から淡路島、神戸に沢山ある。今回行った鹿児島にも空き地に少しだけ生えていた。これは持ち出し、栽培が禁止されている特定外来生物だ。選定理由は「海外で牛がこの植物を食べて中毒を起こしたことがあるため」。キク科はアルカロイドを多く含むため、中毒を起こすものが多い。ヨモギだって生長しきった葉を食べると深刻な中毒を起こす。他になにか理由はなかったのだろうか。
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鹿児島市はあいにくの雨。城山に登ったが、目の前にあるはずの桜島すら見えない。昨日は遠く離れた知覧町からも見えていたというのに…。
昨日、知覧町から見えた桜島。錦江湾に「もや」がでて幻想的な感じで見えた。
城山は島津氏の居城であったとともに、西南戦争終焉の地である。明治初期は鹿児島県庁としても使われた。また、暖地性植物が多く生えているというので国の天然記念物にも指定されている。幕末・明治の史跡と自然が両方存在する夢のような場所だ。
城山で記載され、その名を冠する「シロヤマシダ」。太平洋岸には点々と存在するが、城山で見ると少しだけうれしい。
同じく城山で記載された「シロヤマゼンマイ」。今のところ、ここでしか見たことがない。もう少し南には普通に生育しているそうだ。沖縄のヒリュウシダという種類のミニチュア版のようだ。
城山周辺の一般的な石垣。ヒメイタビというツル植物がびっしりと覆い、日本版アジアンタムであるホングウシダが垂れ下がる。ホングウシダという種類を初めて自分で調べて覚えたのが城山だった。島津氏が治めていた時代や西南戦争で大量の砲弾が飛び交っているときもこれらの植物は一面にあったのだろう。
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ゴールデンウィークは本州を離れて、九州にやってきた。
熊本県の阿蘇山の夜明け。向こう側に見えるのは外輪山。阿蘇山は放牧と火入れで本来樹林になるはずの場所が草地の状態で維持されている。
牧場の縁で良い感じの草地を見つけた。運良く草地の色の違いに遠くから気づくことが出来た。そこにはワレモコウやツリガネニンジン、ヒメスゲなどの高原の良い草地の象徴があった。まだ朝早く観光客がやってくる前なので、道ばたに車を止めてじっくり見ることにした。
10mほど歩いていくとなんとキスミレを見つけた。「良い草地」の20m位の範囲に沢山生えていた。このスミレ、本当に良い草地にしかない。綺麗なので、阿蘇山でもさんざん盗掘に遭い、人目につく場所は惨たんたるありさまだという。ちょうど数日前、監視の回数を増やすというのをテレビニュースでやっていた。あまり人目に触れない場所にある「良い草地」でひっそりと咲いていたとは。写真を撮っているところを人に見られると、キスミレのありかを教えてしまうことになってしまうので、ゆっくり見るのをやめ、さっさと写真だけとってその場所を離れた。短い時間であったが、強烈な目覚ましになった。
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