« 2007年10月 | トップページ | 2007年12月 »

2007年11月

南国の社叢。

高知県室戸岬にある最御崎寺はシイの巨木が生育する南国の神社だ。

Img_4037

建物の脇には亜熱帯植物のクワズイモがたくさんあった。高知県内では室戸と土佐清水に生えている。クワズイモとは「食わず芋」のことで、その昔、空海が、地元の人が食用にしていたこの芋を乞うたが、地元の人はそれを拒んだ。するとたちまちその芋は猛毒の芋に変化したというのだ。サトイモ科の猛毒植物であるクワズイモが食用になるはずはないが、「困った人には施しをせよ」という教えを上手く盛り込んだ話だと思う。

しかし、京都のイメージの強い空海が、亜熱帯の植物であるクワズイモを平安時代に見ていたというのは面白い。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

スミレの一種のラフレシア

ヤッコソウという植物は牧野富太郎という人が高知県で記載した植物だ。黒潮沿いに生育していて、スダジイなどの古木の根に寄生する植物だ。

Img_4015_2

写真はヤッコソウのつぼみ。お遍路の札所の1つ、室戸の最御崎寺(ほつみさきじ)というお寺の境内で丁重に保護されている。本来シイの原生林の植物が神社の中に生育しているのはすごい。社寺林というのは手つかずの自然を良く残していると感心すると同時にお遍路の歴史の長さに感動する。高知県や徳島県で何ヵ所かヤッコソウの生える原生林を知っているが、そのような森がそのまま境内に成立している状態なのだ。

Img_4023

ヤッコソウが寄生しているシイの木は皆大木で、上を見上げると隙間なく枝を伸ばしている様子が分かる。

ヤッコソウは熱帯のラフレシアの近縁種ということになっているが、遺伝子レベルではスミレの近縁になるそうだ。暗い森に咲くヤッコソウと明るい場所に咲くスミレ、似ても似つかないが、ヤッコソウの甘い蜜に引かれてミツバチが訪れている姿をみるともしかしたら近縁種なのかもしれないと思えてくる。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

黒潮に乗って。

室戸岬で調子にのってたくさんの写真を撮ったのでしばらく室戸の植物が続く…。

Img_4002

遊歩道沿いにハスノハカズラというツル植物がたくさんあった。アオツヅラフジという全国にあるツル植物の近縁種だが、分布は暖かい地方に限られる。葉の柄が葉の真ん中からでる特徴がハスと同じというのが名前の由来だ。

Img_4004

亜熱帯植物のガジュマルの仲間、アコウの大木もあった。

ハスノハカズラもアコウも黒潮沿いの太平洋岸に点々と生育している。沖縄の海沿いにも同じものがたくさん生えていた。ハスノハカズラは愛知県の伊良湖岬でもみたことがある。伊良湖岬は「椰子の実」の歌で有名な場所だが、ハスノハカズラやアコウを見ていると黒潮にのって遠く離れた場所に椰子の実がやってくるのも信じられる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

固有と交雑

植物はよく雑種をつくる。以前在来のノダイオウとエゾノギシギシの雑種の記事をアップした。このギシギシの仲間には異様にたくさんの雑種があるらしい。

Img_3988

室戸市でギシギシの仲間の雑種を見つけた。四国には雑種となり全く分からなくなったものがたくさんあることは事前に資料で見ていたが、全く図鑑には載っていないデザインをしていた。ギシギシ属の雑種の特徴である高さ2m以上に達するほどの巨大化をしていた。

Img_3995

付いていた種子を見ると種の縁の翼(風に乗るためのプロペラ)にギザギザがあるので、エゾノギシギシの血が入っていると思われるが、もう片方の親は何なのか全く分からなかった。葉の感じから、在来のギシギシか、帰化植物のナガバギシギシのような感じだが、「分からないのが正解」という資料は確かにそうだと思った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

黒潮つながり

Img_3975

徳島県南部から高知県東部にかけての海岸にシオギクというキクが生育している。今回見たときには花には少し早かったが、つぼみはたくさんついていた。近縁のイソギクというキクはよく栽培されているが、シオギクはこの場所に来ないと見られない。

Img_3978_2

室戸岬にある「目洗いの池」。空海がこの池の水をつかって盲目の人の目を洗ったところ目が見えるようになったという伝説がある池だ。その池のほとりにヒトモトススキというカヤツリグサの仲間が生えていた。高さは1メートルくらいの大型の草本だ。以前沖縄のマングローブでみたことがある。

Img_0509

これがマングローブに生えていたヒトモトススキ。後ろにはマングローブの代表種のオヒルギが生えている。

室戸岬はシオギクという固有のものが生育する一方、黒潮に沿って広く分布する亜熱帯の植物も生育している。特異なようなそうでないような不思議な感覚になる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

南国の秋

室戸岬は暖温帯の最南端であと少しで亜熱帯気候という場所だ。そのような沿海地方の秋はいろいろな花が咲き乱れる。

Img_3971

枯れたクロマツの根元に咲いているのはアゼトウナ。波しぶきのあたるような岩場にたくさん咲いていた。沖縄ではアゼトウナの仲間のホソバワダンを「ニガナ」と称して栽培し、豆腐の上に乗せて食べている。アゼトウナもかじると非常に苦い。

Img_3974

ダンチクも大きく伸びた茎の先に花をつけていた。一見ヨシのように見えるが、大きさは10mをゆうに超える。潮風を受けて枯れかかったウバメガシの森から突き出て大きな群落を作っていた。潮風が直接あたるような場所では山の中腹までダンチクの「森」が広がっていた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

渓流への適応III

渓流などの流水に適応した植物は過去にいくつか紹介した。葉が流線型になったり、岩の隙間にしっかりと根を張る。いろいろな植物に渓流に適応するタイプがある。

Img_3940

ナカガワノギクは栽培されているキクと同属で、渓流に適応したものだ。栽培品のキクよりも遙かに葉が細い。那賀川にしか生育していない。地元では有名で、道の駅にナカガワノギクとワジキノギク(ナカガワノギクとシマカンギクの雑種)が大々的に植えられている。那賀川沿いを眺めていると水際にナカガワノギクが点々と咲いていて美しい。

Img_3947

増水したときに水没し、葉の大部分が流された個体もあった。そのたくましさには感心させられる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

一寸限られた…。

徳島県那賀川のほとりでヒメウラジロを見つけた。ヒメウラジロは冷温帯から熱帯にかけて分布しているが、そうそう見られるものではない。石灰岩質の場所に多いそうだが、そうともかぎらず、自然環境というより人工の石積みに多く見られる。よく使う図鑑のヒメウラジロの写真は群馬県でお世話になっているシダの先生の撮影したものが掲載されている。その写真もやはり石積みに生育しているものだ。

Img_3923

今回みつけたものも人工の石積みにたくさん生育していた。家紋になるくらい洗練された葉のデザインだ。近くに現在勉強中のキク科植物が生育していたが、とりあえずこの綺麗なシダの写真を撮ってからキクの標本を作った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

草地の庶民

昔はお百姓さんが土手や田の畦、茅場の草刈りをしていた。そこにはいろいろな雑草が生えていた。いつの間にかそのような場所の手入れをされなくなり、人里の雑草がいなくなりつつある。川の堤防が治水目的で草刈りをされるようになった結果、かつての人の手を入れていた草地の植物が生育するようになっている。

Img_3918

写真はヨメナ。ごく普通の秋のキクだ。秋に咲く淡紫色のキクには北国のユウガギク、関東のカントウヨメナ、関西のヨメナと種類が多いが、ヨメナが一番元気良く咲く気がする。明るい草地にたくさんの花をつけている。しかも目立つわけではなく、他の草に紛れて咲くさりげない存在感が「庶民らしい」植物だと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2007年10月 | トップページ | 2007年12月 »