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2007年10月

同属のシダ

生き物の進化の過程で1つの先祖から様々な性質や形を得た結果様々な環境に適応してきた。「進化論」のダーウィンが報告したダーウィンフィンチがその例だ。シダにもその一端が伺える。

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写真はイチョウシダ。名前は葉の切れ込んだ1つ1つの先端がイチョウの葉に見えることに由来している。大きさは2~3㎝程度の小型のシダだ。他の植物が全く生えない寒い地方の乾燥した石灰岩の上に生育している。

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こちらの写真はアオガネシダ。暖温帯南部から亜熱帯の苔むした木の幹などにびっしり付いている。大きさは30㎝にも達する。

イチョウシダとアオガネシダ、生育する環境は全く別であるが、同属である。遠い共通祖先からそれぞれの環境に適応し、現在は別種にまで進化したのだろう。

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ネオテニー?

ネオテニーというのは大人になっても子供の頃の形質を残した状態をいう。アホロートル(ウーパールーパー)は大人なのに幼生のようにえらを出している。

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写真はトヨグチイノデ。シダのイノデ属の1種で非常に珍しい。珍しいというだけである程度感動するが、植物体が小さいうちから胞子を付けることができる能力があることに感動する。

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イノデの仲間は大型のものが多く、葉の長さ1mに達するものも普通にある。トヨグチイノデは大きさ10㎝くらいで立派に胞子をつけている。小さな状態でもPolystichum(Poly:たくさんの stichum:(胞子が)ならんだ)というラテン名にふさわしい姿になっている。植物の仲間は小さくても胞子や種子をつける能力をもっているものが多く、大人と子供の区別がないので、動物のネオテニーという言葉は当てはまらないが、トヨグチイノデをみるとつい、ネオテニーという言葉を思い出す。

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秋の河原

秋の河原には銀色の穂がよく似合う。

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日本画などでもよく描かれる川の光景だ。河川敷で一面に広がるこの植物はよくススキと間違われるが、オギであることが多い。オギの穂はススキよりも種子の周辺の毛が白く、光沢も強いため、太陽光や月光に照らされると綺麗に光る。

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オギ原の中から上を見上げると、その背の高さを改めて感じる。高さは3メートル以上ある。天に向かってまっすぐに伸びている姿は凛としてかっこいい。

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石灰岩の山II

石灰岩の山は雨の浸食などで独特の急峻な形になる。

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岩肌が露出したほぼ垂直の崖に張り付いている針葉樹がヤツガタケトウヒである。ヤツガタケトウヒはかつて大陸と陸続きだった頃には普遍的にあったとされ、現在では南アルプス周辺の石灰岩地にほそぼそと生き残っている。

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道沿いにハハコグサの仲間のトダイハハコがあった。これも南アルプス周辺にしか生育していない。葉の表面に白い毛が生えていない近縁種のヤハズハハコというものを富士山の近くでみたことがあるが、白い毛があったほうが、品があると思う。ウスユキソウ(エーデルワイスの近縁)にも通じる繊細さだ。

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石灰岩の山

長野県大鹿村から南アルプスに続く山塊は石灰岩質の岩が露出している場所が多い。石灰岩というのは日本にはふんだんに存在するが、石灰岩が露出している場所というのは少ない。

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豊口山の登り口の様子。紅葉にはまだ早いが、気の早いヤマブドウは紅葉を初めていた。

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フジアザミの花も何とか残っていた。花の直径は6cmくらいだろうか。とにかく大きい。アーティチョーク(チョウセンアザミ)の様に食べられそうだが、食べたことのある人の話ではまずいそうだ。南アルプスの辺縁に多くて、細々と乗鞍~北アルプスにも見られる。南アルプスのフジアザミと、北アルプスのオニアザミ、この2種が山を登り始めたことを感じさせてくれる。

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花は葉から

「花は葉の一部から進化した」という。胞子をつくる胞子のうを葉が幾重にも包んだものが子房、さらに葉が包んで萼となり、萼の一部が色づいてさらに独立して花弁になった。花を付ける植物の祖先にあたるシダ植物にそれを彷彿とさせるものがある。

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写真はナガボノナツノハナワラビ。葉の真ん中から枝がでて胞子のかたまりがでている。普通シダの胞子は葉の裏側につくのだが、これは胞子専用の枝がでる。この胞子の枝を葉が包み込めば簡易版の花のできあがりだ。

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こちらはナツノハナワラビ。ナガボノ…よりもでてくるのが早い。

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帰化植物?

長野県大鹿村の小渋川周辺にはフサフジウツギという綺麗な花をつける低木が生育している。礫河原に広く分布しているが、不思議と小渋川を離れると殆ど見かけなくなる。同じような分布をしている種類には巨大な花を付けるフジアザミが挙げられる。いずれも帰化植物がほとんどない自然度の高い場所に依存的に生育している。このフサフジウツギ、帰化植物という説と在来種という説が両立している。中国産のトウフジウツギという種類と酷似しているため、帰化植物と言われ始めた。実際はどうなのだろうか。

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この花は綺麗な上にさわやかな香りを出す。この仲間はみな綺麗な花をつける。本州のフジウツギや四国・九州のウラジロフジウツギなど、庭に植わっている花木並の派手さだ。

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こちらは九州最南端で撮影したウラジロフジウツギ。本来は夏に開花するものだが、九州最南端は亜熱帯気候区であるため、5月には咲き始めてしまったようだ。

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観察会

「ももしきや古き軒端のしのぶにもなおあまりある昔なりけり」という小倉百人一首最後の句がある。ここで出てくるシノブはおそらく「ノキシノブ」というシダだと思われる。ノキシノブというシダは葉が切れ込まず、動物の尻尾のような形をしている。ノキシノブにもいろいろな種類がある。

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岩一面に生えているのはノキシノブの仲間のビロードシダ。葉にビロード状の毛が生えるシダだ。人里に生えるが、軒というより、古い社寺の石垣とか神木に生えている少し神々しいものだ。

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こちらは奈良県室生寺の境内に生えているビロードシダ。百人一首に詠まれた時代にも確実にあった種類だっただろうが、果たしてこれは当時の歌人たちに認識されていたのだろうか。生き物の古名を調べると、現在「種」として認識されている以上に細かく分かれているものもあるので、ビロードシダにも何かしらの古名がついていたのかもしれない。

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小さな小さな

米どころにはいろいろな水田雑草が生育している。日本で栽培されているイネはジャポニカと言われる中国南部あたりからやってきたものらしい。熱帯由来のイネに伴って、いろいろな雑草も日本にやってきた。水田に生えているもののうち、小指の先ほどの雑草が生えているが、これらも熱帯アジアからやってきたのだろうか。

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上の写真では分かりづらいが、草の間に小さな植物が張っている。スズメハコベという植物である。暖かい地方の農薬を使っていない水田に生育している。地味で目立たない存在だが、急激に減少している植物だ。高さ5cmにも満たないので誰にも気づかれないが、これを見つけると少し幸せな気分になる。

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珍種か庶民か

富山県に調査に行ったときに休耕田の縁でマルバノサワトウガラシを1つ見つけた。本当にゆたかな田園地帯にしかみられない小さな草なので感激した。野生のものを見たのは2回目である。

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珍しいものを見つけたと思っていたら少し奥に一面マルバノサワトウガラシが生えていた。富山県では普通種なのだろうか。01___03

その休耕田で一番多いのはマルバノサワトウガラシだった。庶民なのか珍種なのか。こんなたくさん見ることはもしかしたら2度とないと思い、あわてて写真を撮り、標本を採った。このような植物が数十年前は庶民として生育していたのだろうか。一寸したタイムスリップをした気分になった。

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水路

琵琶湖のすばらしさは湖やその周辺の川だけではなく、農業用の水路まで植物が豊かだ。

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この水路は見渡す限りコウホネが生えている。今やコウホネそのものを見かけなくなったのにこれだけあって良いのだろうか…。水路を管理する側からすれば迷惑なほど生えているのだろう。農薬や三面張りの水路の登場で一気にこういった雑草が消滅している。迷惑な雑草との「共生」はできないものだろうか。

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水に沈んだコウホネが黄色い花を付けていた。植物本体は水に沈むと形を変えて流水に適応するが、花は虫に花粉を運んで貰わないといけないので、花だけ水上に出している。

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コウホネが生育している水路の近くでミズアオイを見つけた。綺麗なのであちこちで保護されていて、柵の中で綺麗な花をつけているが、野生のものを見ることはまずない。外来のホテイアオイが全世界で繁茂している一方で、日本のミズアオイはどんどん姿を消している。

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