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雑種

自然界には雑種というものが結構多い。動物の場合、多くの雑種は繁殖能力を持たないために一代かぎりになり、さほど雑種が繁栄することはない。ところが植物の場合、雑種が頻繁に出来る上、雑種になっても繁殖能力があることが多い。しかも植物の場合、1個体が存在するだけで種子を残すことが出来るため、一度生まれた雑種が延々と独立した種として存続し続ける例が多い。シダ植物などは日本で1000種ほどあるといわれているが、そのうち400種は雑種である。植物はかなりかけ離れた場所に生育しているものであっても、同じ場所に移植すれば簡単に雑種が生まれる。本来日本に生育しているものと外国からきたものが混ざり合っていることがある。セイヨウタンポポと呼ばれているものはもともとヨーロッパのものだが、日本にあるセイヨウタンポポは純粋なセイヨウタンポポではなく、日本のタンポポとの雑種である。タンポポは路傍にありふれたものなので雑種が出来る機会が多かったのだろう。

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上の写真はトガマダイオウというタデ科の雑種だ。両親はノダイオウという湿地に生育する希少な植物とエゾノギシギシというヨーロッパ原産の帰化植物である。長野県内の湿原でノダイオウのようなものをつぶさに観察すると、殆どがトガマダイオウである。これはエゾノギシギシがノダイオウの遺伝子を乗っ取っているのか、ノダイオウがエゾノギシギシの遺伝子を乗り物にして分布を拡散しているのか、植物に聞いてみないとわからないだろう。

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コメント

「♪ カラスなぜ鳴くの。カラスの勝手でしょ。」というドリフの替え歌が思わず口をついて出た。カラスは山に可愛い七つの子がいるから鳴くとは限らない。カラスの鳴き声がたまたま聞く者の心情に響いて「カーワイ」「可愛」と聞こえたのだ。本当のところはカラスに聞いてみないとわからない。 
 ブログの筆者はトガマダイオウについて、「エゾノギシギシがノダイオウの遺伝子を乗っ取っているのか、ノダイオウがエゾノギシギシの遺伝子を乗り物にして分布を拡散しているのか、植物に聞いてみないとわからないだろう。」と書いている。そりゃそうだろう。しかし植物に聞いてもわからないかもしれない。(こんなことに興味を持つ人もいるのだ。)
 当の本人に聞いてもわからないことならいくらでもある。たとえば鍵盤楽器。白鍵と黒鍵が交互に並んでいる。ところどころ黒鍵が抜けているが、ドとレの間にはちゃんと黒鍵がある。この黒鍵はドの半音上だからド♯(シャープ)ともいうし、レの半音下だからレ♭(フラット)ともいう。異名同音だから、たたけば同じ音が鳴る。しかしこの黒鍵がド♯なのか、それともレ♭なのかと言い出したら、そんなこと黒鍵に聞いてみないとわからないということになるだろう。そして黒鍵に聞いても「わからない。」と答えそうだ。何でも大体そんなものだ。
ところが不思議なことに、ド♯とレ♭は「理屈では同じ音だが全く違った音に聴こえる。」などというピアニストがいる。そんなことあるのだろうか…。それは譜面を見たときの演奏者の感じ方の違いから生まれるのだという。♯がついた音符には演奏者の気分は上向き、軽く明るいタッチで弾き、♭がついた音符には逆に指先は重くなるそうだ。演奏する者に色づけされた音の色彩は聴く者の耳にもそのように響き、同じはずの音が違ったものに聴こえるという。♯一つ、♭一つで気分が一変するのだ。種の繁栄の主導権がどちらにあるかで気分の変わる人がいても不思議はない。
BSテレビの「名曲探偵」という番組では、リストの『ラ・カンパネラ』の楽譜の変遷を通してこの不思議な心理にふれていた。リストはこの曲を♭が7つついた変イ短調から♯が5つついた嬰ト短調に書き換えた。この2つの調は同じ高さの短調、つまり同じ音から始まり寸分違わぬ音をたどる音階を持つ。だから本来移調の必要はない。♭の調性は「ラ♭・シ♭・ド♭・レ♭…」と音階をたどるところ、♯の調性はそれを「ソ♯・ラ♯・シ・ド♯…」と異名同音でたどるだけ。番組でピアノを演奏した小山実稚恵さんは、♯の調性は胸にささる角度感があり鐘の音に合っていると語っている。リストは鐘の音への思いを♯の調性に込めたというのだ。
♯の気分・♭の気分まで言われたら、黒鍵はますます自らのアイデンティティについて考え込むだろう。世の中には本当にいろんなことに興味を持つ人がいる。そしてその感性は思いがけない反応をして想像力や創造力を刺激するものだ。カラスの勝手にも、トガマダイオウの誕生の秘密にも。

投稿: Mariko.F | 2008年12月19日 (金) 12:19

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